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「最近、家族が寝ているときに歯ぎしりをしていることに気づいて、マウスピースを作りました。」
実は、これは私自身の最近の出来事です。
寝ている間の歯ぎしりは本人にはなかなか気づきにくいものですが、周りにいる家族は「ギリギリ」「カチカチ」という音で気づくことがあります。
ただ、はじめにお伝えしておきたいのですが、歯ぎしりは程度の差こそあれ多くの方にみられるもので、それ自体がすぐに「病気」というわけではありません。力が強い場合や長く続く場合に、歯がすり減ったり、欠けたり、顎に負担がかかったりすることがある、という位置づけです。
そこで今回は、身近な「マウスピース」について整理してご紹介します。
「マウスピース」と一言でいっても、実はいろいろな種類があります。
ナイトガード(歯ぎしり用スプリント):歯ぎしり・食いしばりによるダメージから歯や被せ物を守る
スポーツマウスガード:スポーツ中の歯や口の中のけがを防ぐ
矯正用マウスピース(アライナー):歯並びを動かす
保定用マウスピース(リテーナー):矯正後の歯並びを維持する
顎関節症のスプリント:顎関節や咀嚼筋にかかる負担をやわらげる
睡眠時無呼吸のための口腔内装置:下顎を少し前に出した位置で保ち、空気の通り道を確保しやすくする
同じマウスピースでも、目的によって役割はまったく違います。見た目が似ていても、別の目的のものを代わりに使うことはできません。
(なお実際には、歯ぎしり用と顎関節症用に同じ形の装置を使うこともあります。名前ではなく「何のために使うか」で考えていただくのがよいと思います。)
今回、家族のために作ったのは、歯ぎしりや食いしばりから歯を守るための「ナイトガード」です。
歯ぎしりが強く長く続くと、
歯がすり減る
歯が欠ける
歯にヒビが入る
詰め物や被せ物、インプラントに負担がかかる
顎や頬の筋肉が疲れる、痛くなる
といった問題につながることがあります。
そのため、歯ぎしりの力が強い場合には、就寝時にナイトガードを装着して歯を守る方法があります。
ナイトガードは「歯ぎしりを止める装置」ではありません
ここは誤解されやすいところなので、はっきりお伝えしておきます。
ナイトガードを入れても、歯ぎしりそのものがなくなるわけではありません。
役割は、歯や被せ物にかかる強い力を装置で受け止めて、歯が受けるダメージを減らすことです。
「歯ぎしりを治す装置」ではなく「歯を守るための装置」と考えていただくと、実際の使い方に近くなります。
以前は噛み合わせのずれが主な原因と考えられていましたが、現在は、睡眠中の浅い覚醒(体が少し目覚めかける瞬間)に関連して起こる現象と考えられています。
関係するとされているものには、
ストレスや緊張
睡眠の質
飲酒・喫煙・カフェイン
一部のお薬
体質(生まれつきの傾向)
などがあります。
ですので、「噛み合わせを削って調整すれば歯ぎしりが治る」というものではありません。
歯ぎしりには、
ギリギリと横にすり合わせるタイプ(音が出やすい)
ぐっと強く噛みしめるタイプ(ほとんど音が出ない)
カチカチと噛み合わせるタイプ
があります。
噛みしめるタイプは音が出ないため、ご家族にも気づかれません。「音がしないから大丈夫」とは言えないのです。
また、日中に上下の歯を無意識に触れさせ続けている癖(TCH:歯列接触癖)もあります。日中の癖は、ご自身で気づいて意識するだけでも変わってくることがあります。
歯ぎしりと睡眠時無呼吸は、いっしょにみられることがあります(どちらが原因なのかは、まだはっきりしていません)。
また、上あごだけに装着するタイプの装置を使ったことで、睡眠中の呼吸の状態が悪くなった例も報告されています。
そのため、
いびきが大きい
家族から「寝ているとき息が止まっているよ」と言われたことがある
日中に強い眠気がある
という方は、マウスピースを作る前に一度お知らせください。装置の種類を変えたり、先に医科での検査をおすすめしたりすることがあります。
なお、睡眠時無呼吸のためのマウスピースは、医師による診断が前提になります。市販の「いびき対策グッズ」で自己判断のまま様子をみていると、無呼吸そのものを見逃してしまうことがあります。
マウスピースには、市販されているものもあります。
手軽に購入できるのは大きなメリットです。ただ、既製品や、お湯でやわらかくして噛み込んで形をつけるタイプには、
特定の歯だけに強い力が集中してしまうことがある
合いが悪く、寝ている間に外れることがある
素材が薄く、強い歯ぎしりでは早く破れてしまう
形が複雑で汚れがたまりやすい
長く使ううちに噛み合わせが変わることがある
といった点があります。
一方、歯科医院で作るマウスピースは、その方の歯型(またはお口の中のスキャン)をもとに作ります。
歯並び・噛み合わせ・顎の動きを確認しながら、厚みや当たり方を調整できるのが特徴です。
特に歯ぎしり・食いしばりのために使う場合は、「とりあえず歯に入ればいい」というものではありません。「歯に入る」ことと「お口に合っている」ことは別、というのが大切なところです。
なお、歯を動かす矯正用マウスピースと、矯正後の保定用マウスピースについては、通信販売などで自己判断で行うことはおすすめできません。歯を動かす処置には、事前の診断と、途中の経過確認が欠かせません。
マウスピースは、作った後の確認も大切です。
実際に使ってみて、
「当たって痛いところはないか」
「違和感が強くないか」
「歯や歯ぐきに負担がかかっていないか」
などを確認します。
お手入れにも少しコツがあります。
熱湯や煮沸での消毒は、変形の原因になります
研磨剤の入った歯みがき剤でゴシゴシ磨くと、傷がついてしまいます
使用後は洗って水気を切り、お渡しのときにご説明した方法で保管してください
使っているうちに歯の状態が変わったり、マウスピースがすり減って穴があいたりすることもありますので、定期的にお持ちいただいてチェックすることをおすすめします。
自分では気づいていなくても、家族から
「寝ているとき、歯ぎしりしてるよ」
と言われたことはありませんか?
また、
朝起きると顎が疲れている
歯が以前よりすり減ってきた
歯が欠けたことがある
朝、歯が痛い・違和感がある
という方も、歯ぎしりや食いしばりが関係しているかもしれません。
ただし、すべての方にマウスピースが必要というわけではありません。歯ぎしりの力が弱く、歯や被せ物にダメージが出ていなければ、経過をみるだけで十分なこともあります。
まずはお口の状態を確認して、実際に負担が出ているかどうかを見るところからです。
歯ぎしり・食いしばりのためのナイトガード:健康保険が適用されます
スポーツマウスガード:自費
矯正用・保定用:原則として自費
睡眠時無呼吸のための装置:医師の診断(診断書・紹介)があれば保険適用
条件によって変わりますので、詳しくは受診の際にお尋ねください。
今回、家族の歯ぎしりをきっかけにマウスピースを作りました。
実際に身近な人の歯ぎしりを見ていると、「本人が気づかないうちに、こんなに強い力が歯にかかっているのか」と感じることがあります。
歯は一生使う大切なものです。
歯ぎしりや食いしばりが気になる方は、歯を守る方法のひとつとして、マウスピースについて歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。